居心地のいいものが思いつかない‥!
はじめまして。音忘信(おんぼうまこと)と申します。趣味で短歌を詠んでいます。最近はコピーライターへの転職を目指してコピーライティングの勉強をしている勤勉な二十六歳です。そうやって「書くキャラ」の旗をXで振っていたら主宰に見つかり、気付けば口車に乗せられエッセイを執筆させていただく運びとなっていました。さながらシトロエンの乗り心地でした。
さて、今回のエッセイのテーマは「居心地のいいもの」です。「居心地のいいもの」!?咄嗟に思い浮かぶものがありませんでした。ここまでお読みくださりありがとうございました。居心地のいいものは「ない」ということで、本エッセイはこれにて終幕です。またどこかで!
筋の悪いジョークはこの辺りで切り上げさせていただいて。「ない」というのも実は、ここ1年半ほど、朝起きては仕事へ行き、仕事が終わればカフェに篭って短歌やコピーを書き、帰って寝て、朝起きては…という生活を送っていたため「居心地のいい瞬間」があまり思い出せないんですよね。短歌もコピーライティングも、書き続ければ上手くなりますが、書かなければ実力はみるみる落ちていきます。面白く書くことを趣味にしていくなら、考えて書くことを職業にしたいなら、書き続けないと。未来のための回遊魚です。日本語のわかるクロマグロです。スイスイ。
前置きが長くなりましたが、今回はそんな生活を送るクロマグロくんが日頃から篭っているカフェについてのお話です。
ベローチェに着いたらすぐに千葉ロッテ
東京の端っこの方にある最寄り駅。「こんばんは」って何時からだろうと考えながら、家と逆方面のエスカレーターをくだります。ロータリーのカーブに沿って進み、ハンバーガーチェーンを横目に、たどり着いたカフェがそう、ベローチェです。家だと集中できないので何かを書く際はこのベローチェに閉店時刻まで三時間ほど入り浸ります。なぜベローチェかというと、利用時間無制限のWi-Fiと、さらに座席の下にコンセントがあるからです。Wi-Fiとコンセント。カフェでの勉強や仕事を受容してくれているのだと勝手に解釈して、勉強に打ち込ませていただいています。店側に客としての単価の低さを申し訳なく思いつつも、心強く感じています。だから居心地がいい。我ながらみみっちい。そのみみっちさがインクに変わると言い聞かせて、ペンを走らせます。
とはいえ、三時間ずっとペンを走らせ続けていることもなく。席に着いてペンとノートを机に置いては、潤沢なWi-Fiと充電環境を駆使してスマートフォンで千葉ロッテマリーンズの野球速報を追っています。中村奨吾選手がヒットを打てば、Xで「奨吾 さすが」「奨吾 天才」と検索をしている自分がいます。三時間居座って三時間ずっと勉強していた日などありません。千葉ロッテマリーンズっていいチームなんですよ。飛び抜けてスター性のある選手はあまりいないけれど、一人ひとりがチームの一員として地道に粘って、両手両足で一点をもぎ取るチーム。過去と現在の精一杯が繋がって橋をかけているような気がして勇気をもらえます。この時点で入店から一時間。まだほとんど何も書いていません。中村奨吾選手が二塁ベース上で笑っています。ワンナウト、一、二塁。さあここからです。
コピーと短歌と野球速報
曲がらないストローでアイスティーを飲みながらペンを持ちます。B5のノートの、締切が近いキャッチコピーの訴求点とコンセプトをまとめたページを開きます。ウンウン唸りながら、たまにウンウンと声に出しながら二十本ほどコピー未満の言葉を書き連ねます。商品を未来人に体験させたり、想像上のおじさんにコンセプトを喋らせたりしながら。そんなことをしているうちに行き詰まります。親の顔よりよく見た壁…。
そうなったら十ページほど空白のページを挟み、締切が近い短歌連作のページを開きます。連作は基本的に自由題なので詠みやすいです。とは言いつつも、テーマに沿った短歌を考え続けていると、次第に短歌を考える蛇口から水が出なくなります。枯渇。でもそのタイミングでコピーライティングに戻ると、コピーの蛇口はちょっと復旧していたりするんですよね。一巡目です。自分の場合、コピーライティングと短歌を交互に書くことで双方調子を上げていけます。これを二巡、三巡と閉店まで繰り返す。たまに野球速報も見ます。飲食店でコピーライティングと短歌と野球速報の三角食べをしているのはこの町で自分くらいのものでしょう。
翌日もベローチェに行って同じことをします。次の日も、その次の日も。店員さんに悪い印象を持たれないように、時折パスタを注文しながら。何者でもないのに諦められないなら、積み上げるしかない。閉店までに納得するところまで進まなければ二十三時まで営業している駅の反対側のサイゼリヤへ向かい、ペペロンチーノを食べ、絞り出すようにコピーを書きます。こうやって音忘は日々着実に体重を増やしていくのです。
ベローチェの話であるはずなのに本格イタリアンレストランに着地してしまったので、せめて最後はベローチェで詠んだ短歌で本エッセイを締めさせていただこうと思います。
血の滲む思い出なんてないけれどインクの滲むノートならある 音忘信
あらためて、ここまでお読みくださり誠にありがとうございました。拙文失礼いたしました。ベローチェ、いいカフェですよ。居心地がいいです。もちろんサイゼリヤも。もしよかったら足を運んでみてください。
それでは!
この記事を書いた人

音忘信
1997年9月28日生まれ。天秤座のO型、短歌詠み。2020年から短歌を始める。
コーヒーを飲むとたまに身体が痺れて動けなくなる。多分アレルギー。

コメント